この本は、心理支援を行う専門職が、クライアントの個人的な問題だけでなく、社会的文脈(ジェンダー、階級、人種・民族など)を常に視野に入れるべきだと注意を促しており、興味深く読みました。
支援者自身もまた、この社会構造の中で育ち、ある種のバイアスを無意識に内面化している可能性を免れない存在です。どれほど意識的に倫理的な態度を保とうとする支援者であっても、完全に偏見から自由になることはできません。それは、人間が非言語的・直感的なレベルで無意識に行動する存在であり、知識の限界もあるからです。その結果として、無意識のふるまいがクライアントに対して意図せぬ抑圧や疎外を生んでしまうこともあります。
この点において、私はむしろAIのほうがマシである側面もあるのではないかと感じました。AIには学習データに起因するバイアスが確かに存在しますが、それは追加学習や人間からのフィードバックによって修正されていく可能性があります。一方で人間の偏見は、非言語的なニュアンスや空気感といった形で容易に再生産され、検証も難しいまま残り続けます。
人間の支援は、この偏った社会の中で希望をつなぐ営みであると同時に、その社会の限界に常に試される、困難な道のりでもあります。私自身は専門家ではありませんが、より良い支援の可能性を探し続けたいです。